温根湯林鉄のディーゼル機導入時の様子について北見営林局内の技術論文集「技術研究」第1,2号で発表されている。
1953(昭和28)年の運行実績を調査した「蒸気機関車及ヂーゼル機関車運材比較について」(留辺蘂営林署 臼田 C一、岸 利之)、
1954(昭和29)年度の運行実績を調査した「蒸気機関車及内燃機関車の比較に就いて」(留辺蘂営林署 上ノ山 清)である。 山間部の雪解けが進んだ4,5月に軌道運材を開始し11,12月まで運材し冬季は運休していたことなど森林鉄道の運用に関することがわかる。 また蒸気機関車と黎明期のディーゼル機関車の比較など鉄道技術史、林業史上で非常に貴重な記録だと思う。 |
1952(昭和27)年6月に野村組工作所製No.11、12が移管されたものの初年度は故障が多発しさんざんであったことは機関車の説明で述べたとおり。
その翌年、協三工業製No.17が加わり、No.11、12の代えのトランスミッションが届いた頃の記録である。 この頃はディーゼル機に燃料費、人件費の低減、防火上の安全、運転時間の短縮と言う期待は抱いているものの永年のノウハウが蓄積された主力の蒸気機関車に運用効率で及んでいないという状態である。 |
No.11、12は5、6月中は全く稼働していない。 野村組から替えのトランスミッションが届く7月までの間は運用に就かせ無かったようだ。 ミッション交換以降は故障もあるものの当時主力のボールドウィン並みの数の運材貨車を牽引している月もある。 まだ故障が多いとは言えディーゼル機に対処する現場の習熟度が上がってきていた様子。 |
1カ月中で修理に要した日数の割合。 トランスミッション交換も根本的な改善にはならず修理に追われた日数の多いことが見て取れる。 一方で故障が少ないとされた協三機No.17も修理日が20%に達する月もあるが取扱いに習熟するまでの初期故障程度と見て良さそうである。 |
強力機No.18が就役。9月26日には洞爺丸台風が来襲し層雲峡を中心に大規模な風倒木被害を発生させた年である。 この年には比較資料として蒸気機関車の成績も載っているので合わせてグラフ化した。 中には現在仁別森林博物館で静態保存されている2号機の成績もあり興味深いものとなっている。 |
秋田市の仁別森林博物館で保存されている温根湯森林鉄道2号機。
1921(大正10)年1月米Baldwin社製の1Bリアタンク機で木曽や津軽など帝室林野、農林省、道庁いずれの森林鉄道にも導入されているので林鉄蒸機の象徴的存在。
2号機は北見局ボールドウィンの特徴であるキャブ後ろの密閉型の薪、石炭貯蔵庫が目を引くほか、エアブレーキ改造が行われているため貯蔵庫下に設置されたエアタンクと配管が特徴的。 |
調査対象となったのは何れもボールドウィン、又は戦時中にボールドウィンを鉄道省釧路工場でコピー生産したB1リアタンク機関車である。
各機の詳細は以下の通り。
(※3)
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輸送量についてはディーゼル機関車が圧倒的優位に立った。
しかし12月は蒸気機関車の輸送量の方が多い。
ディーゼル機関車では冬場のバッテリー上がりを防ぐため一晩中温める必要があるため、冬季は優先的に蒸気機関車を運用に当てディーゼル機関車は一足早く冬眠させていたのではないかと思われる。 意外なことに洞爺丸台風直後の10月は運材量が増している。風倒木被害はあったが線路の復旧は速く風倒木運材に移ることができたということだろうか? |
修理日には定期的なメンテナンスである洗缶が入っており突発的な故障による運休は非常に少ないものと見える。 成績が非常に安定しておりボールドウィン、又はそのコピー機の信頼性の高さが窺える。 |
運用が始まる4,5月に修理日の高い日が集中している。 冬季に動かしていないとバッテリーが上がるなど最初の調整が難しいのがディーゼル機関車の特徴のようである。 しかし一旦動き出した後の成績を見ると前年度と比べ劇的に改善していると言えるだろう。 この年から入った大型機No.18に至っては初期の調整を除きほとんど修理日が無く非常に優秀な機関車だったようだ。 |
ディーゼル機関車は運用開始時の調整や修理が多いことを除けば蒸気機関車とそう大差ないレベルとなっているように見える。 結果的にこの後も協三ディーゼル機の導入が進み4年後の1958(昭和33)年10月に蒸機は引退することになる。 |
(※3)日本の森林鉄道 上巻(小熊 米雄/著 エリエイ出版部) |
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