蘭森林鉄道1級線
木曽川沿岸森林鉄道の一路線として建設された路線。 中央本線三留野駅(現・南木曽駅)に隣接する三殿土場から出てすぐに与川線を分け、蘭川沿いを遡って長者畑へ至る南木曽岳(標高1,679m)の南麓を半周するように線路が敷かれていました。 蘭森林鉄道沿線は木曽と飯田を結ぶ大平街道沿いの集落が多く森林鉄道としては開けた地域を通っていたが路線の大部分は人家の多い地域を避けて敷かれました。 蘭川周辺は民有地で御料林→国有林は民有地を境に南北に分断されており蘭川沿いの蘭森林鉄道は大部分が民地内に敷かれています。 南、北蘭御料林→国有林へは支線や作業軌道が連絡しました。
開けた地域で大平街道も自動車交通が可能だったため妻籠営林署管内のトラック切替えは早く昭和20年代末には使われなくなっていたようです。 1955(昭和30)年度にはトラック輸送への移行を考慮して林鉄の管轄が再編され与川林鉄が乗り入れる三殿土場〜和合分岐点500mを与川林鉄へ編入。 その他の区間は妻籠営林署へ移管されましたが三殿署が管内の木材搬出に使用した和合分岐点〜戦沢間以外は撤去が進みます。 1959(昭和34)年度には実質的な使用者が三殿署しかないためか戦沢までの区間が三殿署に再移管となりますがこの区間も所期の運材を終えたようで1960(昭和35)年度を以て撤去されました。
●路線データ
近代化遺産国有林森林鉄道全データ中部編を元に作成
()内は残存区間距離
1929(昭和4)年度三殿土場〜南沢土場10,130m開設
1931(昭和6)年度南沢土場〜大弥助5,231開設(15,361m)
1953(昭和28)年度2,983m廃止(12,378m)
1954(昭和29)年度2,298m廃止(10,080m三殿土場〜南沢土場)
1955(昭和30)年度三殿土場〜和合分岐点500mを与川林鉄に編入。残存区間を妻籠営林署へ移管(9,580m)
1956(昭和31)年度3,980m廃止(5,600m)
1957(昭和32)年度4,368m廃止(1,232m和合分岐点〜戦沢)
1959(昭和34)年度残存区間を三殿営林署へ移管(1,232m)
1960(昭和35)年度全線廃止
帝室林野局五十年史を元に作成
1931(昭和6)年度開設1940(昭和15)年時点で総延長15,361m。工事費754,093円)

蘭森林鉄道の起点で与川森林鉄道の列車も乗り入れていた三殿貯木場と中央本線三留野駅(現・南木曽駅)構内の配線図。 赤線が森林鉄道で黒線が国鉄(JR)の線路。 三殿土場、蘭森林鉄道開設当時のものと見られる図面を元に描いており、細かい物や関係の薄そうな建造物は省略しています。 施設更新や配線変更も行われたものと思われ現在と建物の配置が異なり、線路の位置は主に通路と化しました。
林政統一、三殿営林署発足直後1948(昭和23)年時点では運輸関係で以下の建物が各1棟あった様子。
 ・工場、機関庫、組立工場(上図の修理工場と同じ?)、検車庫(上図の貨車庫と同じ?)、自動車庫、倉庫、瓦斯発生器室、事務室
林鉄現役時代には1934(昭和9)年6月21日に集中豪雨により蛇抜沢で名前の通り「蛇抜け」が発生、三殿土場や三留野駅が被災してます。

中央本線は複線化して南木曽駅土場側に3番ホームを増設、貨物扱いを廃止したため側線の配線が大きく変わっています。
蘭森林鉄道三殿土場〜与川線分岐点間500mは1955(昭和30)年度に蘭森林鉄道を妻籠営林署へ移管する際に与川森林鉄道へ編入しています。 なお妻籠署に移管した蘭林鉄与川線分岐点〜戦沢間は三殿署が管轄区域内の運材に使用するため1959(昭和34)年度に三殿署へ戻されています。

南木曽町博物館展示の三殿営林署資料を元に作成


@木材の鉄道輸送はなくなったものの現在でも木材が山積みで活気を感じさせる三殿土場。 かつて中央本線と森林鉄道が接続した奈良井、藪原、上松、須原、坂下、落合川とも駅土場が廃止又は移転して現在も残るのはここと野尻だけになってしまいました。 バックには木曽川を跨ぐ桃介橋が架かっています。


A貯木場入口にある三殿土場事務所。 森林鉄道があった頃からの建物と思われます。 B石垣で固められた蛇抜沢の向こうに木造の車庫も。 御料林時代の配線図によるとこの建物の位置には修理工場があるが線路は入っていなかった様子。 手前を流れる蛇抜沢は名前の通り過去何度も「蛇抜け」を起こしているので建物自体も被災したり建て替えられたりしてる可能性あり。


C森林鉄道の貯木場入口。路盤の位置は貯木場より一段高いようです。 D貯木場を出ると中央本線南木曽駅の横を通り抜けます。 前方の住宅付近で線路が2本に分岐しており、谷側の線路の位置に家を建てた様子。


Eすぐに上り勾配にかかり中央本線より高度を上げて行きます。 左の平坦な部分は車庫があった跡のような雰囲気がありますね。 F土場を出て最初の踏切跡。 左上の道を行くと土場の正門や三殿営林署(現・南木曽森林管理署)の前に出ます。


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